
(左から二人目が神さん)
1996年、ギリシアにてギリシア悲劇『王女メディア』で主役を演じ、高い評価を受けたのがダンサーにして俳優の神<じん>ひろしさん。翌1997年にはキプロスの古代遺跡「クリオン遺跡円形劇場」で、東洋人初の俳優として舞台に立ち「王女メディア」を演じ大絶賛を受けた。それ以降もギリシア、キプロスをはじめ、イギリスのエジンバラ、フランスのアビニョン、ニューヨークなど世界各国で公演している。今回はそんな神さんに、海外公演時の裏話や出来事などを中心にお話をうかがった。
<神ひろしプロフィール>
兵庫県生まれ。関西学院大学卒。
ジェイムズ・ディーン、マリリン・モンロー、アルパチーノを輩出したニューヨークの名門アクターズ・スタジオの「メソード演技」を学ぶ。劇団四季出身。
スピリチュアル・ミュージカルの『転生』や手塚治虫のマンガ『どろろ』のミュージカル化で「百鬼丸」と「手塚治虫」の二役を演じる。
ジャンルを超えたダンス界のカリスマとして注目を集める。
1996年 舞踊演出家かわらさきけんじ氏と、演劇制作・プロデューサーの妹尾芳文氏と「カンパニーEAST」を結成。
同年 ギリシアでギリシア悲劇『王女メディア』を公演。絶賛を博す。
(芸術監督:かわらさきけんじ/メディア:神ひろし/イアソン:東野将)
1997年 キプロスの古代遺跡『クリオン遺跡円形劇場』で東洋人初の俳優として『王女メディア』を主演。拍手喝采を浴びる。またラルナカ市のフェスティバルのアンケート調査で1位に選ばれる。
2001年 エジンバラ(イギリス)公演。
神ひろしの『王女メディア』が、スコットランド最大の新聞 Scotsman(スコッツマン)で5つ星の評価を獲得。また、イギリス最大の新聞The Guardian(ガーディアン)でも4つ星を獲得。
2001年 アビニョン(フランス)とエジンバラ(イギリス)にて『王女メディア』と『金閣寺』公演。(芸術監督:かわらさきけんじ/溝口&三島由紀夫:神ひろし)
2003年 モントリオール(カナダ)で『王女メディア』とJ-BOYSを公演。J-BOYSがカナダの新聞『ミラー』の表紙に選ばれる。
同年、エジンバラ(イギリス)にて『マクベス』公演。
2004年 アビニョン(フランス)とエジンバラ(イギリス)にて『サロメ』主演。
2007年 ギリシャ悲劇「王女メディア」主演。ニューヨークタイムズ (The New York Times) に紹介される。
2009年 1月〜2月にニューヨークの名門ラ・ママのアネックス劇場で「ハムレット」(カンパニーEAST)主演。「BACKSTAGE(バックステージ)」(アメリカの歴史と伝統有る芸能オーディション情報新聞)・「NY THEATRE」・「New York Cool」などに紹介される。
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―まずは「現在、どのような活動をなさっているのか」というところからお聞きしたいと思います。
神さん:はい。私はダンサーであり俳優です。15~16年前から新宿で「J28スタジオ」というダンススタジオを主宰しています。このスタジオで「カンパニーEAST」という海外活動に向けた舞踊演劇団をやっていて、私はそこの代表の役者でもあります。ちなみに芸術監督はかわらさきけんじ氏で、日々練習に励んでいるというわけです。

―神さんは海外公演を頻繁になさっていますが、以前から海外での活動を目指されていたのですか?
神さん:いえ、そうではありません。スタジオをスタートさせた頃(1996年)は、手塚治虫氏のマンガ『どろろ』をはじめてミュージカル化した演劇で、「百鬼丸」と「手塚治虫先生」役の二役を演じていました。そんな私に突然降って湧いたように話が舞い込んできたのがギリシア悲劇「王女メディア」の主演をやってみないかという話だったんです。演じるメディアは女性です。私はそれまで女形をやったことがなかったので、その時は本当に戸惑いました。しかもそれを"本場"ギリシアで演じるとのことだったので、なおさらでした。
―いきなりギリシア公演の話が飛び込んできたのですか?
神さん:もう少し詳しく言えば、以前に私が演じた「サロメ」があって、それをギリシアのプロデューサーが見て気に入ってくれ、「王女メディア」のオファーをいただいたというわけです。だけどオファーをもらったのはいいけれど、過去に1度も女形をやったことがない。どうしようと・・・。そこで蜷川幸雄さん演出の「王女メディア」で主演された歌舞伎役者の嵐徳三郎さんに、短い間でしたが、女形芸を教えてもらうことになりました。それでなんとか、ギリシア公演をやったのが私の海外公演のはじまりなのです。

―その時のことを少しお話いただけますか?
神さん:公演したのはギリシアのアテネ、スパルタの古代野外劇場、十字軍の要塞だったミストラ遺跡などです。演出は「カンパニーEAST」の芸術監督である、かわらさきが担当し、プロデュースは妹尾芳文でした。かわらさきの演出した「メディア」ではかがり火を使う薪能風で上演することになりました。「ギリシアの風、かがり火の炎、ギリシアの海を感じるままに踊ってくれ」というのが彼のリクエストでした。舞台に上がった私は自然体となって踊っていました。すると、どうでしょう。途中から私は空中に浮かんで「王女メディア」を踊っている自分を上から眺めているではありませんか。すごい体験でした。しばらくそんな不思議な感覚を味わっていると、突然、満月が目に入ったかと思うと、自分の肉体に戻っていました。何かに取りつかれるように舞っていたのです。そしてしめくくりに白装束でとっくりを持って酒を飲み「木曽節」を歌うという演出があったのですが、目を伏せたままとっくりを置くと、偶然にもそれが割れてしまったのです。そして一瞬の間があった後、私は「ブラボー!」という歓声に包まれていました。なんと、観客たちはスタンディングオベーションで拍手を送ってくれていたのです。

―すごい!踊って瞑想状態に入って幽体離脱を経験されたというわけですね。そして踊り終わった時に成功を手に入れられた。
神さん:「霊的ギリシア」の力が後押ししてくれたのだと思っています。ともかく自分が女形で"ウケる"とは思っていませんでした。終わってからは花束の贈呈があったり握手攻めにあったり。とくに驚かされたのが小さな子供たちがサインを求めて待っているのです。10歳ぐらいのギリシアの子供たちに、ギリシア悲劇がわかるのかと逆にびっくりしました。「ミーディア!ミーディア!」と私の方に手をさしのべてきたギリシアの子供たちの瞳は今でも忘れられません。本当に感動しました。

―その際に、さまざまなものを頂いたそうですね。
神さん:そうですね。スパルタだったと思うのですが、市長から立派はブロンズ像を頂きました。その他、記念の楯などなどです。
―その成功があって翌年からもギリシアの各地で公演されるようになったのですか?
神さん:そうです。翌年の1997年にはギリシアに加えてキプロス共和国の古代遺跡『クリオン遺跡円形劇場』で東洋人初の俳優としてカンパニーEAST の「王女メディア」を演じ踊りました。また同じくキプロスのラルナカ市のフェスティバルの「パティヒオン劇場」でも演じました。

―東洋人初というのは素晴らしい。それだけ高い評価を受けられたわけですね。
神さん:そうなんですが、実はその古代遺跡の『クリオン遺跡円形劇場』を最初に見た時に「よみうりランドの大きいやつだな」っていう感想を持ってしまった。それを口にしたら演出家にひどく怒られてしまいました(笑)。で、話を戻しましょう。確かに、信じられないような評価を受けました。私は「パティヒオン劇場」では国際的歌手のジョルジュ・ムスタキと同等に扱われ、「王女メディア」はロシアバレエ団の「ジゼル」と同じ扱いを受けたのです。そしてパティヒオンの劇場主からは「今まで同劇場で上演された演目のベストプレイだ」と絶賛されたのです。キプロス大使からも「日本とギリシアの文化の見事な融合」などと高い評価を受けたのです。

―そんな海外公演では面白い体験もされたのではないでしょうか?
神さん:そうですね。何度目かの海外公演の時かは忘れましたが、キプロス共和国のトルコとギリシアの紛争地域にある劇場でやったことがあるのですが、そこでは楽屋にも銃を持った警備隊がいるんですよ。それにも驚いたのですが・・・。そんな警備隊がいたにもかかわらず、それを突破して男が楽屋に侵入してきたのです。そして私に向かって「結婚してくれ!」って言うではありませんか。もうびっくり。女形やっているわけだから女性と勘違いしたのでしょうけど、もう本当に困った。「男です!」って何度も言ったんだけど分かってもらえなくて、最後にはズボンを下ろして見せましたよ(笑)。それでやっと納得してもらった。がっかりしてましたけど(笑)。
―女形の弊害というヤツですね。他にもいろいろと・・・?
神さん:ギリシアでのことなんですが、バスが止まって、乗っていた人が次から次へ降りていくと、下で待っていた人たちとみんな握手をしているんですね。「あっ、ギリシアの人たちってみんな仲が良いんだな」って私たちはその光景を見ていたら、突然、パトカーがやってきてその人たち全員を逮捕するんです。聞けば、それはスリの集団だったらしいのです。で、私たちの中に1人ちょっと刺青をしていたヤツがいて、そいつまで連れていかれようとしたのです。「あっ、その人は違うんですよ。日本人です!」って叫んで、なんとか事なきを得ました。それからアテネでは強盗に会いましたね。私の前に現れたのは3人組の警察官。彼らは私に警察手帳を見せながら「お金などの持ち物を見せてくれ」というので、何の疑いもなく見せていたんです。でも、「なんかおかしいなぁ」と思っていて。しばらくしてハッと気が付いて、自分の腹巻の中に入れておいたお金を確かめてみたら、すっかりなくなっていたんです。どうやって抜いたのか分かりませんが、しっかり5万円抜かれていました。そのことを警察に訴えたら、それは警察官を装った強盗だと・・・。

―海外は日本に比べてそういう強盗は多いようですね。
神さん:パリでも会ったんですよ。フランスのアビニョン公演の際にパリを訪れ、町を歩いていたら、美女3人組が私に近づいてきて道を訊かれたんです。美女たちですから、私も何の抵抗がないどころか、逆に嬉しくって(笑)。まったく強盗だとは思わないわけですよ。それで私の周りをなぜかぐるぐる回るんですよ。ところがその様子を見ていたおばさんが騒いだのです。大きな声をあげて。そうしたところ、その美女たちは急に逃げ出していきました。後で聞いたところでは、その美女たちは強盗で、おばさんは「強盗だ!」って叫んでくれたんです。そして「きれいな女性だからって、気を許してはダメよ」ってお叱りを受けましたね(笑)。おかげで何も盗まれずにすみました。それからというもの、外国の町を歩く荷物は後ろではなく、前に持つようにしました。
―パリの町よりも美女に見とれてしまうといけないという教訓ですね(笑)。ところで話は少し戻りますが、ギリシアでの公演が好評だったことから、その後も世界各地で公演を行われるようになるわけですね。

神さん:はい。ちなみに1999年の日本ギリシア修好百周年記念祭には、カンパニーEASTは親善使節団として、ギリシアの様々な古代遺跡劇場の巡演公演を行いました。その記念切手も発売されたんです。そして2001年には旧市街、新市街共に世界遺産に登録されているイギリスのエジンバラ、フランスのアビニョン、2002年にはオーストラリアで、そして2003年にはカナダのモントリオールで公演しました。
―それらの国々では、反応はいかがでしたか?
神さん:はい。それぞれの国で高い評価を頂きました。「王女メディア」は、スコットランド最大の新聞「Scotsman(スコッツマン)」で5つ星という高い評価を頂きました。またイギリス最大の新聞「The Guardian(ガーディアン)」では4つ星を獲得しました。
―ちなみに「王女メディア」以外の公演もなさっていますよね?
神さん:はい。2001年のアビニョンとエジンバラでの公演では、「王女メディア」と「金閣寺」を、2003年にはエジンバラで「マクベス」でマクベスの夫人を演じました。翌年の2004年のアビニョンとエジンバラでは「サロメ」を演じています。他では「J-BOYS」という男性ダンサーたちが繰り広げるセクシーユニットも行っています。ちょっとセクシーなヤツなんですが、これもなかなか評判が良いんですよ。ちなみに「J-BOYS」はカナダの新聞「ミラー」の表紙にも選ばれています。

※東京・新宿のJ-28スタジオにてセクシーユニット「J-BOYS」LIVE!
2010年7月30日 19:00(MENS & WOMEN)
2010年7月31日 19:00(MENS & WOMEN)
2010年8月 1日 14:00(MENS ONLY)&18:00(MENS & WOMEN)
詳しくはhttp://katy.jp/hirojin/でご確認いただくか、 03-3369-7486 までお問合せください。
―すごいですね。神さんの活動はヨーロッパの国々が中心のようですが、確かアメリカでも公演されていますよね?
神さん:はい。2007年にニューヨークの名門ラ・ママのアネックス劇場で「王女メディア」を演じてアメリカの最大規模の新聞「ニューヨーク・タイムズ」や有名な経済新聞の「フィナンシャル・タイムズ」で大きく扱われました。また2009年1月から2月にかけて、やはりラ・ママのアネックス劇場で「ハムレット」を演じました。その批評も「BACKSTAGE(バックステージ)」(アメリカの歴史と伝統のある芸能オーディション情報新聞)などに取り上げられました。

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―アメリカでも高い評価を受けているというわけですね。
神さん:自分がやってきたことが受け入れられるのは、やはり嬉しいものです。ニューヨークでの公演は、また来年2011年12月に行うことが決まっています。もしその時期にニューヨークにいらっしゃる方は、ぜひ観に来て欲しいですね。

―神さんは、公演でさまざまな国に行かれていますが、プライベートではいかがでしょう?また今後行きたい国などはありますか?
神さん:海外旅行のほとんどが公演の仕事に関連しているのですが、ギリシアに行くようになる前には父親と香港に行ったことがあります。また公演後にエジプトに立ち寄ったことがあります。エジプトのピラミッドも壮大で、一度、あの前で踊ってみたいと思いました(笑)。あっ、今後、行ってみたい国ですか?そうですね。チベットに行ってみたいです。スピリチュアルに興味があるので(『神ひろしのスピリチュアル・ダンス』【たま出版刊】も出版されている)、チベットの僧に会っていろいろなことを話してみたいですね。きっとたくさんの刺激をもらえると思います。

―では、住んでみたいと思った国ってありますか?
神さん:そうですね。高い評価を受けたからということではないのですが、ギリシアに住んでみたいですね。やはり芝居(演劇)に対しての見方が違っています。小さな子供の時から芝居に触れているからなのでしょうね。文化的に豊かというか許容範囲が広いというか・・・。たとえば日本ではテレビに出て活躍していないとメジャーではありませんが、ギリシアではそういうことには関係なく、舞台俳優や演劇俳優をきちんと認めてくれる土壌があります。そんなギリシアの風土で過ごしてみたいですね。
―なるほど。ところで今の若い人たちはどこか元気がないというか、冷めている感じがするのですが、そんな若い人たちに何かメッセージをいただけませんか?
神さん:はい。やはり夢を持って欲しいですね。自分の身近なところで終わらせるのではなく、"ちょっと無理だと思っている"ところを目指すべきだと思います。ずっと上にある夢ではなく、ちょっと上にある、ちょっと無理かなと思える夢。そしてその夢は持ち続けて欲しいです。ずっと夢見る少年(少女)であって欲しいですね。夢とエネルギーを持って生きていれば、その夢は実現できますよ。スピリチュアルダンサーの私が言うので、間違いありません(笑)。
『幸せ生活を過ごす為に「1日1命♪」と言うスローガンで、毎日、新しい事を一つしよう!
24時間と言う1日が一生なら、その日は何をするだろう?!
1年で365の生涯を重ねたら、出来ない事は何もない!』
―今日はお忙しいところ、お時間を割いていただきありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。
Interviewer,Writer:亀崎 恒(フリーライター)
Editor:森 裕(ファイブスタークラブ)
★★★★★ファイブスタークラブ・ツアー情報
ファイブスタークラブでは、神さんゆかりの地に興味を持たれた方々のためにツアー情報をご案内いたします。
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Comments:1
- 神ひろし 2010年7月23日 00:54
取材記事、とても良い感じで、こうやって見ると、自分が公演で出たとこですが、改めて、もう一度、プライベートで訪れて見たいとこばかりです♪
クリオン遺跡円形劇場・・・良いですよ。
ギリシャの白い家並みと空の突き抜ける青さは感動します♪

